「投資で世界を支援する新しい仕組み」/金子郁容氏

2016年07月27日

2016年6月8日、金子郁容氏による政策議論講義がありました。

以下、そのサマリとなります。

 

投資によって社会を「よくする」という「社会的投資」の動きが活発になっている。KIVA(キーバ)(https://www.kiva.org)やAcumen Fund(アキュメンファンド)(http://acumen.org/)などがよく知られている。最近になって幾つかの国で広まってきた、政府が「胴元」になって実施される社会的投資の新しい仕組みとしてSIB(social impact bond)がある。SIBは、コミッショナー・サービスプロバイダー・投資家という主要な三つのプレーヤーから組織され、資金やノウハウを投資して、社会的課題を解決、改善するユニークな仕組みである。SIBを率先して進めているのはイギリス、アメリカ、オーストラリアなどである。日本には、まだ本格的なSIBはない。日本でも、今後、介護・医療・福祉などの分野にこの仕組みが取り入れられることが期待されている。

 

 

◇SIBとは

SIBとは、コミッショナー(行政)・サービスプロバイダー(NPOなど)・投資家(企業や個人など)が、それぞれ、必要資金の投資・ノウハウ・協力関係などを投入することにより、社会的課題を解決、改善する仕組みである。

サービスプロバイダーは社会的に不利な立場の人々の状況を改善するためにサービスを提供し、投資家はサービスプロバイダーのサービス提供に必要な資金を供給する。サービス提供の成果(アウトカム)が実現されたらコミッショナーが投資家に契約に沿った“ボーナス”を含めて支払いをする。

これらのプレーヤーの他に、サービスプロバイダーに対するコンサルタントやサービスのアウトカムの評価をする機関などの参加もあり、それらの多様な組織をまとめるためSPC(special purpose company)という会社組織を構成する。

 

 

◇SIBの実施例

イギリスのピーターバロ刑務所で再犯率を減らすことで刑務所維持費用を削減しようというケース。20010年に開始。4年後のアウトカムとして、早期に刑務所を出た受刑者は(比較対象になるコントロールグループに対して)再犯率が8.4%減少した。当初は7年間継続される予定であったが、成果が上がったことで政府はSIBを計画より早めに4年間で終了した。

 

 

◇SIBを活用するメリット

サービスプロバイダーにとってのメリットは、サービス提供の費用が確実に支払われ、既存のサービスを拡張でき、資金を得ることで新しいアプローチを試すことができ流。投資家は、成果が上がれば行政との契約に沿った“ボーナス(=投資のリターン)”が得られる。コミッショナーにとっては、サービス支援が必要なグループの支援を従来より確実に、投入資金に見合った支出で効果的に行うことができる。

 

 

◇SIBの現状と今後の期待

大手の投資企業も、ビジネス分野として、SIBに積極的に参入している。SIBに関して、現在、一番成功していると考えられるのは、国家戦略としてやっているイギリスである。アメリカでは投資は富豪層が行うケースも多いく、ある程度成功していると思われる。日本では今の所、本格的なSIBの実施例は見当たらない。今後、医療や介護などの分野にSIBのスキームを使うべく行政や投資企業や研究者などが協力することが期待される。

 

 

◇質疑応答より

Q:公的機関が対象事業を選ぶ基準は何か A:これまでの実施分野は、教育・養子縁組・再犯防止などである

 

Q:何かしらのインデックスが必要ではないか A:あった方がいいと思う。

 

 

金子郁容(かねこ いくよう)氏のプロフィール
 慶應義塾大学SFC研究所 主席所員

慶應義塾大学工学部卒、スタンフォード大学にてPh.D.(工学博士号)を取得。
ウィスコンシン大学准教授、一橋大学教授を経て
1994年度から 慶應義塾大学教授
2016年度から 慶應義塾大学SFC研究所主席所員、同大学名誉教授。
2014年度から 明治大学経営学部特任講師も務める

専門は、情報組織論・ネットワーク論・コミュニティ論。

 

講義データ (2016年6月8日に開催された、政策議論講義「SIBの現状とこれからの可能性」より)