「優れた会計報告なくして優れた政治なし」/吉田寛氏

2016年09月28日

2016年8月31日、吉田寛氏による地方自治講座がありました。

以下、そのサマリとなります。

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「優れた会計報告なくして優れた政治なし」

マーケットの誕生により、生産者と消費者が分業して、生活が豊かになった。近代国家においても主権と権力が分離され、権力者側の課税については、主権者側の同意を得ることが重要となる。意思表示をしていない子どもに、つけをまわすような財政は認めるべきでなく、主権者は、自分たちの支払った税がどのように使われているかを考えるべきである。主権者が同意をするための情報を提供する会計報告こそが、よい権力者をつくることになる。

◇経済社会における豊かさとは

『会計』という言葉は、司馬遷の「史記」のなかに出てくる。そこでは『会計』とは、会って功績を計るという意味である。

 豊かさについて、アダム・スミスは「私有財産制と分業が、生活を豊かにする」と言った。すなわちマーケットの誕生によって、それまで一体であった生産者と消費者が分業し、交換経済により、ほしいものを多くのものから選ぶことが可能となった。このように余剰を豊穣に変えるところがマーケットであり、そこでは各自が、その得意とする分野で経済社会に参入できるようになった。

ここにいう自分の得意とする分野以外の仕事を、他人に任せる場合、取引行為を目的と結果に分けて記録する複式簿記が重要となる。

◇課税に必要なもの

次に、憲法にいう『税制』の意味について確認してみたい。

その前提として、『最高権力』とは強制的に他人の権利に介入する権力をいい、この意味で必要以上に課税することは、合法的な略奪と解される。

なぜ税を支払うかについて、人権宣言では、必要性の確認が前提とされ、板垣退助の民撰議員設立建白書には租税の義務ある者は、『政府の事を与知可否するの権理を有す』とある。

主権と権力が分離された近代国家において、権力者側の課税については、主権者側の同意を得ていることが重要である。

すなわち、主権者側は、自分たちの支払った税がどのように使われているのかを考えるべきである。税を支払うことについての無知・忘却・軽視は、政府を腐敗させ、公が不幸となる原因であり、主権者に情報を提供して適切な選択の機会を与える優れた会計報告こそが、優れた権力者をつくることになる。

◇結論として

結果を見ることは、やっている仕事を見ることである。市民が任せた役所の仕事が、市民のためになっているかどうかを正確に判断できる会計報告書が、代表者を選ぶ場合に求められるものである。

アメリカ独立戦争のスローガンである「代表なければ課税なし」という文言の通り、課税についての意思表示していない子どもにつけをまわすべきではない。現在、税を支払う主権者が承諾をするための情報としての重要な役割を、会計報告は担っていることになる。

◇公会計の原則

ちなみに、公会計研究所が提唱している公会計の原則として、以下のようなものがある。

・「報告範囲決定の原則」 すなわち会計報告とは、首長の責任の及ぶ範囲でなすべきである。この場合において、改善は、時間的経過のなかで考えなければならない。

・「帰属主体峻別の原則」 すなわち、主権者に提供された財と、行政の管理する財とを明確に区別すべきである。

 

・「有用性の原則」    会計報告は主権者の意思決定に有用でなければならない。市民の皆さまから徴収する税金は、大きな金額となります。会計の知識のない方でもわかりやすいように市民一人当たりの金額で貸借対照表を表示している。

行政は、市民の要請に応えるために多くの事業をおこなっている。行政がその事業を営む能力があるかを判断できるように、成果と市民の負担を明らかにすることを求める。

 

・「保守主義の原則」   主権者に不利な影響をおよぼす可能性は開示する。将来の税金をあてにする財政運営については、原因が生じた時に計上することを求める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉田寛氏のプロフィール

 吉田寛(よしだ ひろし)

 公会計研究所代表

自由経済研究所代表
公認会計士・税理士

千葉商科大学大学院教授

1998年  宮城県の企業会計手法導入プロジェクトで、「成果報告書」を作成
2000年  福岡県福津市で「町民の貸借対照表」「町長の貸借対照表」「成果報告書」を作成
2000年  特定非営利活動法人 樹木・環境ネットワーク協会監事  NPOの「成果報告書」を作成
2001年  全米税制改革協議会水曜会および国際公会計学会(スペイン・バレンシア)にて

「公会計の財務諸表利用者としての納税者」を報告
2002年  財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団監事
2007年  神戸市長の賃借対照表を作成(試作)
2007年  アメリカ合衆国ジョージア州サンデースプリングス市の賃借対照表を作成(試作)
2009年  国際公会計学会(イタリア・モデナ)にて、「公会計における会計原則」を報告
2011年より 栃木県大田原市において「市民の貸借対照表」「市長の貸借対照表」「成果報告書」を作成

 

講義データ (2016年8月31日に開催された、政策議論講義「公会計の基本的な考え方」より)